遺産 −筑紫哲也氏が日本のジャーナリズムに残したもの−

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2008-11-08

どちらかというと、私は筑紫哲也氏について、そして彼の名を冠とする「筑紫哲也News23」とTBSについて、その報道姿勢に対して非常に厳しい見方を常にしてきた。

端的に言えば、これらの報道姿勢に対して批判をしていたのは確実だろう。

【代表例】
TBS・News23「ネット時代のジャーナリズム論 」(1)−紹介された「調査結果グラフ」に突っ込みを入れる
TBS・News23「ネット時代のジャーナリズム論 」(2)−存在しない発言で叩く旧来手法
TBS・News23「ネット時代のジャーナリズム論 」(3)−偏った「フィルタリング」が問題となる

その他の記事は、拙ブログの過去ログを参照。



筑紫氏が昨日、息を引き取った。73歳。

筑紫哲也さん死去 NEWS23前キャスター 73歳(朝日新聞:おくやみ)

彼なりに満足のいくジャーナリスト人生だったのかどうか、私には知る術もない。でも、彼なりに良い人生だったと評価していたのならば、幸せなのだろう。

しかし、これからの問題は「彼がテレビジャーナリズムに残した遺産をどう受け継ぐか」ということだ。

メディアは権力の監視のために、時に権力に抗い、時に権力のありのままを流す役割がある。それは、表現の自由を守り、人々の知る権利に応えるためだとしている。

彼の報道は、私なりに考えて「筑紫哲也の」もしくは「筑紫哲也News23の」見方を流す報道手法だった。

表現の自由、という意味では別に悪いことではない。

しかし、私が彼を(もしくは彼の名を語る報道を)批判していたのは、その主義主張を一方的に流し、もしくは報道に都合の悪い内容を歪曲、無視を徹底的に決め込み、出来上がった「素材」を「報道の自由」「平等・中立」「客観的報道」の名を騙り伝えるという報道手法であった。

ジャーナリストであれば、本来許すべきでない報道素材の歪曲を、彼は許してきた側面がある。

そして、その報道内容を創り続けてきたスタッフ。その作業を許してきた放送局。問題を正面から批判をすることなく、表面的な批判しかできなかった業界。

私はいつか書いた ↓

テレビの卑しさを語り、嫌われる理由は語らない。 より
しかし、彼はメディアがなぜ「嫌われる」のかを語ろうとはしない。いや、知っているだろうけど、書けない現実。

危機管理と呼ばれる企業防衛が最優先されるなかで、
権力に抗って声をあげる仕事は疎まれる。
 → 疎まれているのは、「自省」をせずに批判を繰り返す報道姿勢。

ものごとを懐疑的に、批判的に省みることは、後ろ向きな暗い心根だと蔑まれる。
 → 蔑まれるのは、一方的な懐疑的・批判的報道すること「しか」できない心根。

結果、かつて良心的報道と呼ばれた姿勢は、気味の悪い偽善的陶酔と揶揄される。
 → 「良心的報道」と自称するメディアの傲慢さ。

たかがテレビ、それほどのもんじゃないだろうってあなたは言うかも知れない。
だがそれならば、僕らは報道の旗を振りかざして、
人様の生き死にの場に踏み込む資格などない。
 → 人の生き死にの場に「踏み込む」のではなく、人を「蹂躙」して、事件を消費財として「食い荒らす」その醜態。
 → ジャーナリストとして、彼が踏み込むことができなかった領域がここに存在している。

しかし、彼が残してきたこれらの足跡や荷物を、私は負の遺産だと決め付けはしない。むしろ、メディアの報道手法として、今後に突きつけられた課題だと考える。

彼がメディアに残したものについて、今後どのように処理するのか。業界の中でどう活かしていくのか。問題点や改善点を見いだし解決していくことにより、彼の残した「遺産」が素晴らしきものに変わるだろうと考える。

しかし ↓

筑紫哲也さん死去:「キャスター」お茶の間に浸透(毎日新聞:話題) より
 ▽ニュースキャスターの鳥越俊太郎さんの話 同じ時期に新聞社を辞めてテレビの報道番組に転身した、同志であり兄貴分。日本の国の在り方を示し、進むべき道を探る羅針盤のような存在だった。私たちにとって、大きな損失だと思う。最近までネット上で往復書簡を連載していたのに、早過ぎる。
 → 大きな損失だと鳥越氏は語るが、筑紫氏の残した遺産を有効的に使わないことのほうが、よほどの大きな損失だ。

彼の残した遺産を有効利用しなければ、それは「負債」となって後の世代に、つまりは後輩のメディア関係者にのしかかってくるのだから。

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