メディア受難の時代が、今年も幕を開ける。

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2009-01-12

「インターネット上で流れている情報のウソ・ホントを検証する」コーナーで、こんな稚拙な言い訳をしなければならない事態に追い込まれたという例。

nhk20090111.jpg

テレビ朝日 番組に自作ブログ(NHKニュース:社会)
テレビ朝日系列で10日に放送された情報バラエティー番組の中で、インターネット上の情報として紹介されたブログが、実際には番組のスタッフがみずから作成したものだったことがわかりました。

この番組は、テレビ朝日系列で10日午後7時から放送された「情報整理バラエティー ウソバスター!」です。番組では、「体」や「動物」などさまざまなテーマについての情報の真偽をクイズ形式で検証していました。この中で、インターネット上のうその情報を見破るとして「地下鉄にカーブが多いのは運転士の居眠り防止」、「サケとシャケの呼び名は加工の有無で変わる」などの情報が書かれた6つのブログを紹介していました。しかし、テレビ朝日によりますと、これらのブログはいずれも、番組制作会社のスタッフが番組のためにみずから作成していたということです。これについて、テレビ朝日広報部は「番組で紹介した情報は実際にブログに載っていたものだったが、放送までに作成者の撮影許可が得られなかった」としたうえで、「結果として視聴者の皆様に誤解を与える表現となり、申し訳なく思っています」と話しています。
 → その他の関連報道はgoogleニュース「ブログ テレビ朝日 自作」検索結果を参照のこと。

構造としては、以前TBSが「インターネットの掲示板」を作って批判されたことと全く同じだと思うが・・・

それを人は「捏造」と呼ぶ より
しかし気になるのは、このイメージ映像に書かれた桜庭選手の批判内容の作成過程。

いくら(TBS広報部曰く)イメージ映像とはいえ、実在もしない「桜庭選手批判が掲載された掲示板のようなもの」作成した人は、何を考えながら桜庭選手への批判を書いたのか、気になるものである。
よくよく考えれば、テレビ局の人の記憶だけで、このように巷の声・世間の声のようなものを「イメージ映像」という形で放送されるのはどうなんだろ。事実に基づかないものでも「イメージ映像」ということで放送できる危険性もはらんでいるのだから。
 → 特に後段の部分は、メディアに関わるものとしては「踏み越えてはならない一線」だからこそ、という思いもある。

深い話になると、こんな所にまで波及しそうな話だが・・・


そんなのは度外視して、ふと考えてみた。

この番組が持つコンセプトを引用すると ↓

ウソバスター(テレビ朝日) より
今まで信じてきた常識やニュースなど
日本人がホントだと信じこんでいる知識の裏にあるウソを
どんどん暴き出し、バスターします!
 → なんだか正義の味方みたいな造りだな、とか思ったり。

似たような番組のコンセプト(というのか?)に「トリビアの泉」の中にあった「ガセビアの泉」のコーナーはというと、

これだったら、自己責任による能動的な意思が働いたものだから、最後の「引用はOKか否か」の判断を視聴者に任せることはできるし、不可能であっても「製作会社の誰かがペンネームを使って投稿した」ことにすれば、一般の視聴者に被害が行く事は、まず考えられない。

一方の「ウソバスター」は、インターネット上の掲示板やブログなどに掲載された、ウソだといわれる情報を引用して「どんどん暴き出し、バスターします!」というもの。

別に番組に情報提供もしていない人に、突然「情報提供をお願いします!」ということをしたら、どうなるだろうか。

情報提供者が「ウソの情報」を紹介してきた本人の場合なら、まだいい。「ウソの情報を流している」と放送局側に紹介された人だと、どうなることか。

安易に「ウソバスター」のコンセプトを紹介し、「番組作りのために、情報提供をお願いします」といわれて、「はいそうですか」と言ってくれるとでも考えたのだろうか?


まず、反感を買われてもおかしくないだろう。

公共の放送で「ウソバスター」にウソを暴かれる「ブログ」。そんなブログ主になって、何が楽しいのか?一時期は「テレビに紹介されました」みたいな感じで誇れるかもしれないが、紹介された理由は

「うその情報をインターネット上に書いていた」

さすがにハンドルネームとはいえ、これをWeb上で晒されるだけでなく、地上波で紹介される・・・よほどの売名行為か、もしくはハンドルネームが有名になることでメリットを得られる人以外は、敬遠したいものだろう。

理由もなく「自傷行為」をしたい人はいない。傷つきたい人なんて簡単に見つかるものではないのだ。

一方で、Yahoo!知恵袋などの投稿をもとに番組を作ろうとすると、

これでは、「ウソバスター!」の活躍できる隙間すらない。

そうなると、「誰も傷つかずに」「うその情報を提供してもらえる」「更に、放送素材として紹介可能」なブログやWebサイトを作らなければならない。で、最終手段として考えたのが

「ウソ情報を書いたブログを作ってしまう」こと。
これなら、確かに「ウソの情報を書いた」として傷つく者は誰もいない。
「Web上にあるウソの情報をバスターする!」という番組コンセプトも満足する。

番組コンセプトを守るためのパッケージ作り、としては正解かもしれない。
だが、「放送」としては踏み越えてはならないものを作ってしまったことが間違いである。

「放送文化」に対して、(テレビ局、番組制作会社を含め)彼らは傷をつけたのだ。

もう一度、書いておこう。
それを人は「捏造」と呼ぶ より
テレビ局の人の記憶だけで、このように巷の声・世間の声のようなものを「イメージ映像」という形で放送されるのはどうなんだろ。事実に基づかないものでも「イメージ映像」ということで放送できる危険性もはらんでいるのだから。
 → 引用がめんどうくさかった、作成者の撮影許可が得られなかった、番組製作の時間や費用面などの問題など、最終的にいろいろと言い訳はあるだろう。

だが、メディアが一般企業・官公庁に対して「等しく」「同じように」突きつけてきた「説明責任」と同じように、この問題も扱えるのか?軽々しく扱うようでは、メディア不信のスパイラルは止まる訳がない。

メディア自身が招いてしまった「メディア受難の時代」が、今年も幕を開けた。



【参考】

サケとシャケの違いの違い(家畜の歌合戦)
 → Yahoo!知恵袋のくだりなどを説明している。

【ネットは嘘だらけです!】 テレビ朝日 「情報整理バラエティー ウソバスター! 」で仕込みブログ発覚まとめ
 → 内容は過激だけど、情報が整理されているWiki。

日本民間放送連盟 放送基準(条文、解説文)(北陸放送) より
第6章 報道の責任

(32) ニュースは市民の知る権利へ奉仕するものであり、事実に基づいて報道し、公正でなければならない。
ニュースの報道は、なによりも正確かつ公正でなければならず、公平で客観的であることが求められる。
取材にあたっては、まず事実を確認し、また対立している問題については多角的に取り上げ、一方に偏ることのないよう配慮しなければならない。
ドキュメンタリーや情報系番組においても虚偽や捏造が許されないことはもちろん、過剰な演出などにならないように注意する。
スポーツニュースおよびニュース性を持つ各種番組の取り扱いも、報道の各条項に準ずる。


テレビ朝日の番組基準(テレビ朝日:番組基準) より
1.テレビ朝日は、社会的責任と公共的使命を重んじ、不偏不党の立場に立って、真実を伝え、公正な姿勢を貫くとともに、放送の品位を高め、表現の自由を堅持する。
放送に当っては、民間放送の特色をいかし、豊富多彩、健全かつ清新な番組編成を方針とし、文化の向上、教育教養の普及に寄与するとともに、正確迅速な報道、豊かな生活情報、および多種多様な魅力ある芸能娯楽を提供し、広告の公正な媒体として、公共の福祉と産業経済の繁栄に貢献し、社会の良識と信頼にこたえるものとする。

2.番組の編成に当っては、報道番組、教育番組、教養番組、娯楽番組、および広告などの調和をはかり、その配列は視聴者の生活時間を考慮して構成する。内容については、社内外の審議機関を活用し、その質的向上と品位の保持に努め、普遍性のある香り高い放送を目指すものとする。
以上の基本方針にもとづき、編成する番組種別は次のとおりとする。

(1)報道番組
報道番組は、ニュース、実況中継および時事問題に関する解説、論評などを内容とする。放送に当ってはテレビジャーナリズムの特性を活かし、事実を正確、迅速、公正に取扱う。
スポーツに関する番組についてもこれに準ずる。

(2)教育番組
教育番組は、学問、芸術、技芸、技術などの分野において視聴者の生涯にわたる自己啓発に資するとともに、能力の開発、資質の向上などに役立つ内容とする。放送に当っては、その対象を明確にし、有益かつ適切な内容を効果的に編成する。

(3)教養番組
教養番組は、社会、経済、科学、文芸、美術などさまざまな領域において、広く国民の知識見聞をひろめ、情操を培い、倫理性を高めるとともに、視聴者にとって豊かな生活の情報源となるような内容とする。放送に当たっては、その意図するところがわかりやすく、親しみやすく視聴されるよう配慮する。

(4)娯楽番組
娯楽番組は、ドラマ、芸能、音楽、映画、演劇など視聴者に喜びとやすらぎをあたえ、明日への活力の糧となるような幅広い内容とする。放送に当たっては、健全な社会生活の潤滑油の役割を果たし、明るく楽しい番組とするように配慮する。

広告
広告の放送については、より多くの事業体などがこれを利用できるように配慮し、視聴者の生活に役立つ各種情報を提供することにより、公共の福祉と産業経済の繁栄に寄与するものとする。放送に当たっては、社内外の調査考査機関を活用して、公正な広告放送を期する。

3.番組および広告の企画、制作、実施に当って守るべき基準と限界については、「日本民間放送連盟放送基準」に準拠する。

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